HTLV-1とは?症状・原因・治療方法・対策まとめ

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HTLV-1とは、ヒトT細胞白血病ウイルスのことです。

母子感染や性交渉によって感染するとされており、成人T細胞白血病などを引き起こす原因となります。

今回は、HTLV-1の感染経路や原因、引き起こす可能性のある病気などについてご紹介します。

HTLV-1について知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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荻野 豪俊

ディレクター歴9年・ライター歴2年。情報をまとめることに情熱と脂肪を燃やしています。

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HTLV-1とは?

HTLV-1とは、「Human T-cell Leukemia Virus Type1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)」の略称です。

成人T細胞性白血病や悪性リンパ腫の原因となるウイルスで、性的感染や母子感染によって、白血球の1つであるTリンパ球に感染します。

HTLV-1に感染しても、無症状(無症候性キャリア)がほとんどです。
感染者が一生のうちに、成人T細胞白血病を発症する確率は、約5%未満といわれています。

日本国民の100~150人に1人はHTLV-1キャリアと推定されており、近年は大都市圏で増加しているのが特徴です。

原因

HTLV-1に感染する原因は、感染者の母乳や精液、血液などに含まれるウイルスに感染した細胞が、生きたままの状態で大量に体内に入り込むことです。

感染経路

HTLV-1の主な感染経路は、母乳による母子感染、性行為による性的感染、針刺し事故などによる血液感染です。

HTLV-1は感染力が極めて低いウイルスなので、授乳や性行為以外の日常生活では感染しません。
ただし注射器の共有や、血液がついたカミソリやハブラシなどの共有は感染の原因となります。

症状

HTLV-1に感染しても、自覚症状はありません。
また約95%の方は、生涯HTLV-1感染を原因として、病気を引き起こすことはないといわれています。

しかし一部の方は、以下のような病気による症状を引き起こす可能性があります。

HTLV-1で引き起こす可能性のある症状

病名

概要

成人T細胞白血病(ATL)

感染したリンパ球(T細胞)ががん化する病気

HTLV-1関連脊髄症(HAM)

歩行障害や排尿障害を引き起こす脊髄の病気

HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)

眼球内のぶどう膜の炎症が起こり、視力が低下する病気

潜伏期間

個人差はあるものの、潜伏期間はATLで40年以上、HAMやHUは数年以上といわれています。
すなわち、ATLは40歳を超えるまでほとんど発症しませんが、HAMやHUは若い方でも発症するケースがあるのです。

なお、潜伏期間でも他の人にうつる可能性はゼロではありませんが、HTLV-1は感染力が低いウイルスなので、性行為や授乳を除く日常生活で感染拡大を心配する必要はありません。

検査と費用

HTLV-1に感染した直後は、抗体検査を行っても正しい結果が出ない可能性があります。

感染の不安がある場合は、数ヶ月経ってから再び抗体検査を受けることをおすすめします。

検査方法

HTLV-1に感染しているかを調べるためには、血液中にHTLV-1に対する抗体があるかどうかを調べる検査を行います。

体内からHTLV-1を排除するための抗体がある場合は、HTLV-1に感染しているといえるのです。

抗体検査では、まず一次検査(スクリーニング検査)を行います。
一次検査で陽性となった場合、偽陽性(感染していないのに陽性となること)の可能性もあるため、確認検査を実施します。

この確認検査で抗HTLV-1抗体の存在が確認されれば、HTLV-1感染と診断されるのです。

HTLV-1の検査方法・費用相場

方法名

概要

費用

一次検査(スクリーニング検査)

  • 化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法
  • 化学発光免疫測定(CLIA)法
  • 電気化学発光免疫測定(ECLIA)法
  • 粒子凝集(PA)法

5,400~5,500円程度

確認検査

  • ラインブロット(LIA)法
  • ウエスタンブロット(WB)法

5,400~5,500円程度

なお、妊婦検診で受ける抗HTLV-1抗体の一次検査(スクリーニング検査)は公費負担となるため、無料です。

保険診療について

一次検査および確認検査は、保険適用で受けられます。

ごく稀に、確認検査で抗HTLV-1抗体があるか確認できず、判定保留になるケースがあります。
判定保留になった場合は、HTLV-1核酸検出(PCR)法によって、HTLV-1感染の有無を調べることになるでしょう。

このHTLV-1核酸検出(PCR)法は、確認検査で判定保留になった妊婦と、生体臓器移植の対象者に対してのみ保険適用となります。

治療方法と費用

リンパ節の腫れや皮膚の異常、歩行異常、目の異常などの症状が見られて、HTLV-1関連の疾患が疑われる場合は、血液内科や皮膚科、脳神経内科、眼科などと連携して治療を行います。

また現在、市販薬を含めて、HTLV-1感染を直接治療する薬はありません。

ここからは、HTLV-1によって引き起こされる病気の治療法についてご紹介します。

治療方法

ATL・HAM・HUの治療方法は、主に以下のとおりです。

ATL・HAM・HUの治療方法・費用相場

方法名

概要

費用

ATL治療

  • 抗がん剤による化学療法
  • 造血幹細胞移植 など

症状、治療法による

HAM治療

  • 炎症を抑える薬

症状、治療法による

HU治療

  • 副腎皮質ステロイド(点眼あるいは内服)

症状、治療法による

残念ながら現時点では、HTLV-1感染を直接的に除去する薬は開発されていません。

そのため、病状や進行具合に合わせて適切な措置を行うことで、腫瘍を取り除いたり、炎症を抑えたりするのが一般的です。

保険診療での治療について

ATL・HAM・HUの治療には、健康保険が適用されます。

病院で支払う自己負担額が一定を超えた場合は、「高額療養費制度」を利用できます。

高額療養費制度についての詳細は、加入している健康保険の窓口に問い合わせてください。

治療の流れと治療期間

症状によって治療法は異なるため、治療の流れや治療期間は特定できません。

検査結果によって主治医より治療方針が説明されるので、よく相談してから治療方法を決定していきましょう。

予防方法

HTLV-1の主な感染経路は、母乳を介した母子感染と、粘液や精液を介した性的感染です。

母子感染を防ぐためには、以下のいずれかの方法を実践しましょう。

母子感染を防ぐ方法

  • 母乳をまったく与えずにミルクを与える
  • 90日未満の短期間のみ母乳を与え、以降はミルクを与える(短期母乳栄養)

また性的感染を防ぐためには、性行為の際にコンドームを使用するのが効果的です。

その他に、血液がついたハブラシやカミソリの共有など、血液感染を招く行為は避けましょう。

注意点

HTLV-1感染が判明しても、コンドームを正しく使用すれば、性行為による感染拡大をほぼ防げます。

ただし、子どもをもつことを希望している場合は、まずパートナーとじっくり話し合ったうえで、お互いの気持ちを確認してください。

もっと詳しく知りたい方へ

HTLV-1についてもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクもご覧ください。


参考

HTLV-1のクリニック

HTLV-1の診察は、産婦人科や脳神経内科、保健所などで行っています。
クリニックにより対応できるかが変わりますので、事前にwebサイトや電話などで確認してから相談するのがおすすめです。

Q&A

HTLV-1についてよくある質問をまとめました。

Q.自然治癒しますか?

A.HTLV-1感染自体が、自然治癒することはありません。

しかし、HTLV-1感染者の約95%は、生涯を通してHTLV-1感染に起因する病気を発症せず、感染していない方と同じような生活を送っています。

Q.妊娠・出産への影響はありますか?

A.HTLV-1に感染していても、妊娠や分娩に影響を及ぼす心配はありません。また、母親のHTLV-1感染が原因で、赤ちゃんに先天性の障害が生じることもありません。

母親がHTLV-1に感染している場合、母乳ではなくミルク(あるいは90日未満の短期授乳と併用)で育てることで、赤ちゃんが感染するリスクを大幅に軽減できます。

Q.お風呂やトイレ、タオル共有で感染しますか?

A.HTLV-1は感染力が極めて低いウイルスなので、お風呂やトイレ、タオル共有で感染することはありません。

また、くしゃみや咳、握手、キスなどの行為でもうつる心配はないので、過度に気にする必要はないでしょう。

Q.パートナーが陽性になりましたが、自分は症状がありません。感染しているのでしょうか?

A.1回程度の性交渉で感染するリスクは、極めて低いといわれています。しかし、長期間にわたって同じパートナーとの性行為が続く場合、パートナー間で感染する可能性があります。

ただし、パートナーが陽性で自身も感染している可能性があるとしても、ただちに健康上の問題が起こるわけではありません。

Q.完治しますか?

A.今のところHTLV-1を除去する治療法はないため、一度感染が成立すると、生涯にわたり感染したままとなります。

ただし、HTLV-1に感染していても、生涯を通してまったく症状が出ないケースがほとんどです。

まとめ

今回は、HTLV-1の感染経路や原因、引き起こす可能性のある病気などについてご紹介しました。

HTLV-1は、母子感染や性的感染、血液感染によって人にうつる可能性のあるウイルスです。

稀に深刻な病気を引き起こす可能性もあるため、心配な場合は早めに検査を受けましょう。